2004年1月末、突然騒がれ出したことに、議員の学歴詐称疑惑というのがあった。この報道に関しても、大手メディアは、権力側に弱いという欺瞞性(インチキ)を際だたせた。
 まず、この問題は週刊誌とワイドショーが中心になって盛りあがった。そして、大手新聞が追随する形で報道された。しかし、なぜ、一介の民主党議員・古賀潤一郎学歴詐称には厳しく、自民党幹事長の安部晋三の同種の問題はほとんど不問に付されたのだろうか? また、首相・小泉純一郎にも疑惑 suspicion が発覚したのに、厳しい追及がなさなれなかったのだろうか? とくに大新聞、テレビは、古賀のときは連日大きく報道したが、安部・小泉となるとほぼ黙殺 take no notice してしまった。安部や小泉の疑惑を最初に伝えた週刊誌の記事は無視 ignore されたも同然だったのだ。
 しかし、よくよくチェックしてみれば、「学歴詐称」という意味では、安部や小泉のほうが悪質である。というのも古賀は「卒業」というのは大ウソだとしても、ペパーダイン・ユニバーシティ Pepperdine Univ.には確かに学部生 undergraduate として在籍していたからだ。「20単位ほど足りなかった」と大学の学生課が言う以上、それだけは確かだろう。しかし、安部はサザン・カリフォルニア・ユニバーシティ USC 側が「専攻 major はなく、取得したコースも『外国人のための英語』で、政治学は入っていない」と言うのだから、学部生でもなかったことになる。ところが、安部が公表しているのは「南カリフォルニア政治学科に留学」である。
 ご承知かもしれないが、アメリカの大学は学部生(undergraduate 3〜4年で学士号 bachelor degree をとる)で入学するとき、学科別に入学するというシステムがない。日本のように学科別に合格者を決めるなどということはない。だから、そもそも安部が表明している「政治学科」とはなんなのかまったく理解できない。しかも、大学側が言うように、『外国人のための英語』コースに通っていたとしたら、それはESL(語学研修)のコースであり、大学内にあるとはいえ、これは学歴(アカデミック)というものではなく、日本で言えば『NOVA』のような語学スクールにすぎないのだ。‥‥〔中略〕‥‥
 日本は「学歴社会」だと言われている。しかし、こうした事件の経過を見ると、それはまったくのウソだということがわかる。日本人ほど、学問や学位を尊重 respect しない人々はいないのではないだろうか。(pp.124-5)

ちなみにこの話題の後日談については以下など: