• リオタールと『ポスト・モダンの条件』について:

‥‥かれ〔リオタール〕は、「ポスト・モダンの時代に入るにあたっての、高度に発達した社会における知の条件」にかんするすぐれた研究報告[『ポスト・モダンの条件』‥‥]を公けにしている。この本は、たいていはそれとして明示しないままではあれ、明らかにドイツの二人の思想家の立場を自分の一貫した論争相手として想定している。ルーマンのシステム論と、ハーバーマスの合意とコミュニケーションの社会理論である。
 リオタールの書いたものは非常によく読まれているが、著者は機会のあるごとに、それらが哲学的主張をかかげた書物として読まれることに抗議している。

 『ポスト・モダンの条件』は哲学書ではない。だが、これが明確に社会学的であり、一種の歴史研究でもあり、認識論という性格ももつ書物であることはたしかである。これは(ケベック州政府の大学協議会により、その会長の要求によって)わたしに課せられた主題であった。先進国における科学の現状について、レポートを提示するという課題である。そのための哲学的基礎は、きちんとつきつめて叙述することができなかった。しかも、これは、この本の簡単な序論として書いたものである。哲学的基礎のほうは、直接的なものも間接的なものも、『文の抗争』のなかに見出されることと思っている。[『啓蒙』*1一項]

(pp.13-4)

*1:「W・ヴァン・ライアン」と「D・ヴェーマン」との対話『啓蒙、崇高、哲学、美学』のこと、らしい。注に書かれている書誌情報は以下;"Les lumières;le sublime;philosophie;esthetique,in:Social Philosophy/Philosophical Anthropology Groupe,Reprint Series No Ⅰ.University of Utrecht,1987,S.Ⅰ.だが、この記事自体は検索したが見つからなかった。代わりに:Reijen, Willem van and Dick Veerman. "Les lumières, le sublime. Un échange de paroles entre Jean-François Lyotard, Willem van Reijen et Dick Veerman," in Les Cahiers de Philosophie "Jean-François Lyotard: Réécrire la modernité" (1988), 5. pp. 63-98. という記事が見つかる;cf.http://sun3.lib.uci.edu/~scctr/Wellek/lyotard/special_journals_jfl.html