• 井上順孝『若者と現代宗教:失われた座標軸』、ちくま新書、1999年
  • またしてもひさびさに本を通読。ブクオフにて100円。だからではないけれど、よい本なのでは。参考文献がほしかった。
  • 宗教社会学の70年代:

 時代の流れから言えば、きわめて後ろ向きという印象を与えることの多いファンダメンタリズムが、情報時代にきわだってきたことは、なかなか興味深いことである。ファンダメンタリズムが世界的に脚光を浴び始めた時期は、ジル・ケペル『宗教の復讐』で扱った世界的な宗教の復興の時期、すなわち1970年代後半という時期とほぼ重なっている。この頃、それまで欧米の宗教社会学の主流を占めていた「世俗化論」の予測を裏切るような出来事が、世界各地で目につくようになったのである。
 一口に世俗化論といっても、その意味するところは、研究者によってけっこうまちまちだが、多くは、社会全体に対する宗教の影響力の弱まりが前提となっていた。‥‥極端な見解としては、宗教は個人・レジャーなどとともに、もっぱら個人的な領域で、その存在意義をかろうじて保つにすぎなくなる(宗教の「私事化」)、という観測すら出されたのである。
 しかし、70年代以後、風向きは急速に変わっていった。いくらか大げさに言えば、宗教が世界の政治変動、社会変動の主役である、などと受け止める見方も出てきたのである。そこで、ジル・ケペルは、この時期に政治と宗教の関係において、劇的ともいえる転換が起こった、とみなした。‥‥そのような宗教のエネルギーのなかでも、もっとも衝撃的な形で受け止められたのが、ファンダメンタリズムである。現代のファンダメンタリズムとして注目される運動のいくつかは、まぎれもなく情報時代、グローバル化時代と呼ばれるマクロな流れの中に生じている。(pp.169-72)