内閣府は二〇〇四年二月、「〇三年一〇〜十二月期のGDP(実質国内総生産)は年率換算で七%増」と発表した。その後も、「景気は好転、雇用も改善」という報道が続いているが、その内実はどうか。‥‥
 〇二年から〇四年にかけて、確かに完全失業率は下がっている。雇用者の人数も増えている。しかし、増えているのは「パート・アルバイト、派遣社員契約社員」などの非正規雇用だけで、「正規の職員・従業員」は実に九六万人も減少している‥‥
 転職が容易な社会などつくられてはいない。いったん失業した人たちは再び正職員の職を見つけることが難しく、不安定な就労に吸収されていることは、このデータ〔労働力調査による〕からも明らかである。(p.42)

 自分の仕事に、どうして他社の人間を使うのか? 厚生労働省が二〇〇二年七〜八月におこなった民間労働力需給制度実態調査のなかに、「パート・アルバイト・臨時だけではなく、請負労働者を受け入れる理由」という項目がある。その回答(該当事業所一九三、複数回答)を見ると、
第一位「雇用調整が容易なため」 (六三・二%)
第二位「雇用管理の負担が軽減されるため」(四八・七%)
第三位「経費が割安なため」  (三二・一%)
企業にとっては、安く使えて、雇用責任に気を配る必要もなく、いつでも簡単に契約を打ち切れる。派遣・請負という「間接雇用」が増えていく理由はそこにある。(p.45)