そもそも不登校はなぜいけないのでしょうか――根本に返って考えてみましょう。子の将来の可能性に拘束を与えるという以外に、きょうだいにも、親の可能性にも、そして日本の可能性にも拘束を与えることだからだと私は思います。一人の子の不登校がきょうだいの不登校の引き金になる例は枚挙にいとまがありません。一人の不登校の子が学級崩壊のもとになる例も見てきました。また不登校は、家族全体の健康や生活設計に影響を与える問題です。不登校は学校教育にとどまらず、地域社会や国力にも影響を与える甚大な社会問題なのです。(p.30)

救われました, 2003/12/16
レビュアー: カスタマー   静岡県 Japan
小3の息子が不登校になった。複数の病院・相談所等に相談したところ、いずれからも「今は見守る時期」といった指導を受けた。数ヶ月、そうした援助者や妻からも息子への働きかけを禁じられたまま、様子を観察するのみで一向に出口が見えない日々に疑問を感じ、不登校について調べ始めて何冊目かに出会ったのが本著だった。

著者は、数多い臨床経験をベースにして、不登校に至った心理でなく生活パターンによって分類し、それぞれの問題点を指摘している。著者は、その方法論を自ら異端と言うが、その洞察は鋭く、不登校は時間が解決してくれるといった無意味な幻想を抱かせるのでなく、長期化することによって負う社会的リスクを明らかにした上で、復学を助けるための親の役割を具体的に示している。そこに示される解決策は、心理分析から導き出されたものでないとしても、結果的には心理的に十分納得できるものである。

読者は、本著を参考にし、意を決して不登校からの克服に取り組み、息子を復学させることができた。もし、本著に出会うことなく数年を「ただ見守る」だけに過ごしていたら、と考えると恐ろしさを覚える。本著は、読者にとっては当に福音の書であり、著者に感謝している。