• 引用その一:

隠された失業者としてのフリーター
 実は、割を食っている層は、中高年層だけではありません。ある意味では、いまの若者たちというのは、中高年層以上に、不況の被害者であるかもしれません。
 バブルの頃は、若者たちにとってはきわめて「楽勝」な時代でした。というのは、その頃は、たいして勉強をしていない大学生でも、いくらでも内定が取れたからです。バブルの頃には、多くの企業が、事業を拡張し、設備投資を拡大し、積極的に人集めをしていました。結果として、労働市場では若年労働力の奪い合いが生じたのです。
 ところが最近は、相当優秀な学生でも、自分の望むところにすんなりと就職できるわけではないという状況です。それは当然です。企業はいま、リストラに邁進しています。経済全体が落ち込みつづけており、当面は昔のように拡大する見込みはないから、リストラを一生懸命にやる以外にはありません。そのような状況では、とても新入社員を積極的に増やすというわけにはいきません。そうすると結局は、これからの将来有望な若者たちの誰かが、必ず職からあぶれることになります。それはたとえばどういうかたちで現われるかというと、フリーターです。(pp.17-8)

  • 引用そのニ(つづき):隠された失業者としてのフリーター;

 世間はしばしば、失業してしまう人や、職を得られない人に対しては、「その当人に問題がある」と考えがちです。たとえば、資本主義経済や市場経済が成熟する途上にあった十九世紀には、景気が悪くなって失業が拡大しても、それを景気悪化に伴って必然的に生じる現象とは捉えられていませんでした。それはもっぱら、個人の資質の問題だと考えられていたのです。
 実は、現在のフリーターの問題も、まったく同じことだと思うのです。フリーターになるような若者が甘いのだという捉え方をする人が非常に多いのですが、おそらくそれは正しい見方ではないと思います。若者たちは当然、これから先があるから、将来的に伸びていくだろう業種に就職がしたい。自分を生かせる職場を見つけて、そこで一生懸命頑張りたいと考えている。ところが、いくら探しても探しても、それが見つからない。‥‥結局、いくつ会社を回っても、申し訳ございませんという返事をもらうことになる。これをディスカレッジド・ワーカー(就業意欲喪失者)といいますけれども、いくら職を探しても結局は見つからないわけで、やがてはいやになってしまい、就職活動を自発的に断念してしまう。そんないやな思いをするのなら、一〜二年はフリーターでもやって、自分が何をやりたいかをもう少し考えてみよう――当然、そう考える若者が増えるわけです。(pp.18-9)