大竹:‥‥以前、近所の小学5年生のグループが、総合学習で経済学者にインタビューしたいと言ってきたんです。テーマを聞いたら、「お金がなくて困っている人を助けるにはどうすればいいか」。そのときのやりとりは『経済学的思考のセンス』という本に書いたのですが、この問題は本当に難しい。
 ひとつ言えるのは、困った人を助けるためには、ある程度寛容の精神を持たないとだめだということです。無駄が生じるのは仕方ないこととして、助けを出したほうがいい。
佐藤:完全な公平さを求めすぎるのも目につきます。今の日本では、それは不公平を増すことになりやすい。たとえば、貧しい家庭に奨学金を出そうとすると、「貧しいふりをする人たちをどう見分けるのか」といった話がすぐ出てくる。
麻木:生活保護でもそうですね。
佐藤:そう。でも、少々だまされてもかまわないんですよ。今の日本には、そのくらいの豊かさはあります。小さな不公平をあまり細かく気にしていると、相続税の話ではありませんが、大きな不公平を見逃すことになりかねません。(p.191)