• 大野誠『ジェントルマンと科学』(世界史リブレット34)、山川出版社、1998年
  • 読了。ロックの時代の出版事情:

 王立協会は一六六〇年十一月にロンドンで設立された。チャールズ二世が王位へ復帰した半年後のことであった。協会の設立については、さまざまなことが指摘されている。‥‥
 だが、もっとも重要なのは、協会がたんなる知的な社交クラブではなく、科学研究のための国家的な機関を志向したことであった。この努力の結果として、一六六二年には国王から勅許状が与えられた‥‥これにより、協会は正式に法人資格をえて、これまでの科学グループにはみられなかった公共的かつ永続的な性格を有するようになった。法人として認められたということは、遵守すべき事項を定められるとともに、特権を行使できることだった。
 具体的にいえば、前者では役員の選挙、資金や所有物の規約をもつことであり、後者のうちで一番重要だったのは、著作の出版許可権だった。一六六二年には出版物の事前許可制法が議会で制定され、一般には国教会の主教に出版許可を求めねばならなかった。しかし、協会は主教を経由せずに自由に出版できたのである。長期的に見ると、これは科学知識の集積や普及にとってはかり知れない意義をもった。それを物語るのが、一六六五年から協会の定期刊行物として出版された『フィロソフィカル・トランザクションズ』である。‥‥(p.25-6)