貴族政アテネの背骨をなす機関は、スパルタの長老会に当たる評議会(Boulē)で、終身議員から成り、アレイオス・パゴス(軍神アレースの丘の意で、アクロポリスの西側にある石の丘)の評議会、あるいはアレオパゴス会議とよばれた。この名の由来は明確には分かっていないが、評議会はここで殺人罪を裁いた。もともと殺人というものは、ホメロスの詩にも反映しているが、国家に対する犯罪ではなく、当事者たるフラトリアの処置すべきもので、血の復讐はフラトリア成員の義務であった。しかし死者の魂の信仰と関連して、殺人者すなわち血を流した人を不浄者と見る考え方が強化するに伴い、血を流すことは浄められなければならない犯罪とされるに至り、殺人は共同体の神々に対する犯罪とされ、したがって共同体たる国家の関与するところとなった。そこではじめは王が、後にはアレオパゴス評議会が殺人犯を裁くに至った。‥‥(p.106)