だがある者は、イギリスは祖国だと言っている。それならイギリスの行為は一層恥ずべきものだ。野獣でもその子をむさぼり食おうとはしない。野蛮人でも身内に戦いをしかけはしない。したがってこの主張が本当なら、かえってイギリスを非難することになる。しかしあいにく、それは本当ではないのだ。いな一部分だけ本当だと言うべきだ。祖国や母国という言葉は、だまされやすいわれわれの心の弱点につけ込んで、偏見を植えつけようとする下劣な腹黒い謀略から、王やその取り巻き連が悪賢く用いてきたのだ。イギリスではなく、ヨーロッパがアメリカの祖国だ。この新世界はこれまで、ヨーロッパの各地方で市民的・宗教的自由を守って迫害された人々のための避難所であった。(「コモン・センス」、p.46)