江原由美子[2001]『ジェンダー秩序』、勁草書房

 街頭を一つの制度として把握するのも、コンネルの「ジェンダー体制」把握の特徴である。‥‥確かに女性は、街頭(特に夜間)のこわさゆえに、行動を控えさせられたり、夜遅くなる仕事につけないなどの影響を被る。ある日系の中年アメリカ人女性は、アメリカと同じ服装や態度で日本の街頭や電車の車内を歩いていた時には、日本人の男性から、かなりいやがらせやからかいや痴漢行為を受けたという。ところが日本の中年女性をまねた服装をしたところ、ピタリとそれが止んだという。このことは、日本の中年女性たちの服装は、性的いやがらせや痴漢行為の対象(性的対象)として扱われないための、防衛努力ではないかという推測を可能にする。街頭を制度として把握することは、今後非常に重要になってくると思われる。(p.196)