‥‥見てわかるとおり、個人収入でも世帯収入でも、1955年以降、格差は拡大しつづけている。若い世代にくらべて、中年世代がどんどん裕福になっているのだ。世代間での富の分配では、日本は中年世代がとくに優遇される社会、いわばおじさん社会なのである。
 「若者はかってだ」「気ままだ」「いい目をみている」という声はいつの時代にもある。その最新版は「パラサイト・シングル」である。‥‥本当はいったいどちらがどちらに寄生しているのだろうか。昔にくらべて、今の中年世代は若い世代より本当によく働いているのか。本当に経済に貢献しているのか。
 ‥‥もちろんいろんな解釈ができる。
 経済という複雑なシステムのなかで、いったい誰がどれだけ貢献しているか、きちんと測るのはむずかしい。‥‥
 率直にいえば、私は本来の「パラサイト・シングル」において、どちらがどちらに寄生しているかはどうでもいいと考えている。
 大都市のなかで、二、三十代の男女がそれなりのプライヴァシーを確保しながら親と同居できる家庭は、かなり恵まれている。親の多くは図2で見た「中の上」と答える高収入層だろうし、子どもの多くも高学歴で、専門職や管理職につきやすい。どちらが寄生しているかは、コップのなかの嵐にすぎない。
 おじさん社会のなかで不平等にあえいでいるのは、パラサイトできる親をもたない若い世代である。「パラサイト・シングル」という言葉が危険なのは、誰が寄生しているのかが疑問だからではなく、パラサイトできない若年層までもが楽をしているように思わせるからだ。(pp.113-4)