エウセビオスは、オリゲネスがクレメンスの生徒の一人であったと伝える(『教会史』六・6・1)。‥‥しかし、実際にオリゲネスがクレメンスのもとで学んだことがあったのか否か、結論を下すのは難しい。オリゲネスは、その著作の中で、何人かの先代のキリスト教著述家の名前をあげているが、クレメンスの名をあげることはない。クレメンスの教説に言及することはあるが、「ある人々が述べているように」というような表現を用いている。また、クレメンスの思想および語彙にみられる特徴のいくつかに対する反動が見られる。例えば、クレメンスは霊的な人の本質的な徳をアパテイア(不動心)にみているが、オリゲネスがアパティアについて語るのはごく稀なことである。オリゲネスにとって大切なことはアパテイアよりも、感情を適度に抑えることである。いずれにしても、オリゲネスがクレメンスの著作を知っていたことは確かである。(pp.28-9)