ドラマールのこの本〔『ポリス論』〕における命題というのは、個人にとって余分なものが国家にとっては不可欠であるかもしれず、その逆も成り立つという点です。第二の重要な事柄は、人間の幸福を政治の客体にしている点です。なるほど、西洋諸国で政治哲学が始まって以来、誰しも人々の幸福こそは統治支配の永遠の目標たるべしということを知ってもいたし言いもしていたのはわたしも非常によく承知していますが、しかしその場合、幸福は実際に良い統治支配の所産ないし結果であると理解されていた。ところが今や、幸福は単なる結果にとどまらない。個々の人々の幸福は、国家の存続と発展のための必要条件である。幸福は条件であり、手段であって、単に成果ではないのです。人々の幸福が国力の構成要素である。(p.255)