• チャールズ・シンガー『生物学の歴史』、西村顯治訳、時空出版、1999年(原著1931年。1959年の三版の訳)
  • 叙述がクールでわかりやすくて泣ける。豊富な図版も泣ける。1959年の本なので今だともう古いところもあるのかしら。いずれにせよ、こういう本は文庫かなにかで出してほしい。15000円はどう考えても高い。持ち運ぶのもつらい。携帯してちょくちょく読める内容なのだから。おすすめ。
  • 緒言から;

 科学的な研究方法の心髄は、研究者がこの宇宙のある一部分だけ切り離して、それらについて、それを自己目的として考察することにある。確かにその意味では、専門分化は、科学の方法のうちに暗黙裡で認められている。しかし、この宇宙の一部分を研究のために切り離すことと、その宇宙の部分が実際にほかの諸部分とは無関係だと信じることは、まったく別物である。‥‥科学を概観する素直で適切な方法はたしかに、時代を追って、自然が啓示するべきものを知ろうという万人に内在する欲求に身をゆだねることなのである。そのようにして述べられるならば、科学は人類の知的探求の道程の記録となり、科学そのものが科学史と形影相重なる。科学史は科学そのものである L'histoire de la science,c'est la science même。(p.5)