もっとも、すべての企業の役員や官庁のトップなどが、その子弟や知人を「コネ」で紹介し、企業がそれらを採用するようなことは、現実にはありえない。特定企業の採用者のうちの相当の割合を縁故採用の者が占めることになってしまうからである。能力に基づかない採用システムを長年継続することは、企業にとって多大なマイナスになるため、実際には一定割合以上を縁故によって採用することは非効率的であり、非合理的である。
 したがって、縁故は、高い能力や資質が要求されない職種にのみ強力に働く。つまり、女子学生の就職に縁故は強い力を発揮する。「縁故採用を積極的にしたいわけではないが、ゼロにするわけにもいかないという事情もある。長期雇用を前提としていない一般職の女性については、実質的な能力差がそれほどなければ縁故採用優先になるのもやむえない」というある採用担当者の発言には、奇妙な説得力があった。
 ‥‥就職活動において決め手となる三要素を、彼女たちは「じ・げ・こ」と呼ぶ。「じ」は自宅、すなわち下宿生活をしていないこと、「げ」は現役入学そして留年していないこと、「こ」はコネの頭文字である。‥‥(pp.39-40)