小杉:‥‥日本社会では、親が少しお金をかけなければ彼らがいいスタートを切れないということも、一方では事実ですよね。
 宮本:そういう背景がありますね。先進国の中で、親責任がこれだけ強い社会というのはないですから。
 小杉:高等教育が完全に「私」の費用で行くべきものだという感覚は、かなり特徴的ですよね。
 宮本:「今日からおまえは自分でやれ」と、十八歳で追い出したとして、それができるかと言ったら、できないですよね。その問題を抜きにしては語れないところがありますね。
 小杉:ニートとかフリーターが増加して、例えば若い人たち職業訓練制度をつくろうとしていますけれども、欧米の職業訓練制度をつくろうとしていますけれども、欧米の職業訓練制度は、従来、親から自立した上で職業訓練を受けて仕事につくことが前提になってきたので、訓練期間に何がしかの経済給付というものが前提になっているわけです。だけどこの間の議論を見ていると、日本の訓練プログラムは、全部自己負担ですよね。それは結局、「親が払え」ということです。‥‥(pp.85-6)