• 溝口元・松永俊男『生物学の歴史[改訂新版]』、放送大学出版会、2005年
  • ぱらぱらする。とくに以下。
  • 第十章 20世紀初頭前後の生物学2:細胞説、発酵論争、免疫学・微生物学生態学の成立(溝口元)
  • 第十一章 20初頭前後の生物学3:実験研究の確立(溝口元)
    • 1. 生理学の状況
    • 2. ホルモン研究
    • 3. 実験発生学の誕生
    • 4. 実験所、研究所の設立と展開
  • 1から。細胞説、シュライデン、シュヴァン:

 19世紀に入ると顕微鏡の性能の向上に伴い、生物の基本構造に対する観察は大いに進展した。ドイツ、チュービンゲン大学のモールは、植物の構造単位が細胞であることを認めた。‥‥一方、動物細胞は植物細胞に比べて一見、形が様々であり動物、植物に共通な細胞という概念まで至らなかった。それに一歩近付いたのがチェコプラハ大学教授プルキンエであり、ニワトリ卵の細胞に「核」を見出した。植物細胞の核は1831年、フランスのミルベルや、イギリスのブラウンが観察している。核という名称は、このブラウンによって命名された。‥‥
 こうした背景の下に、1838年ドイツのシュライデンは「植物発生論」と題する論文を発表し次のように述べた。「いくらかでも高い水準に発達した植物は、完全に個体性をもって独立した個別的存在であるところの細胞の集合体である」‥‥(pp.145-6)

‥‥このように、彼は植物の基本単位が細胞であることを明確にしたが、さらに動物でもこの考えが成り立つことを示すとともに、シュライデンよりも広汎に細胞に関する見解を展開したのが、同じドイツのシュヴァンであった。‥‥シュヴァンは1839年『動物および植物の構造と成長の一致に関する顕微鏡的研究』を著した。本書は全3部からなり、第1部で「動物界と植物界を隔てていた主な障壁――すなわち構造の不一致――は、これによって崩れ落ちた」と述べている。(p.146)