• 加藤秀治朗『日本の選挙:何を変えれば政治が変わるのか』、中公新書、2003年
  • 夜中に流し読み。最近きちんとした本を読めていなくて少しかなしい。

 わが国では「政党しか選べないよりも、候補者も選べる方がよい」という意見がよく聞かれる。新聞の投書欄などでは特にそうである。新聞に投書をするような人は、選挙に熱心というか、真面目に取り組んでいる人なのだろうから、同じ選ぶのでも、できるだけ細かいことまで、自分で選択できる方がよいと思うからであろう。だが、有権者の多くは、その人たちと同じように選挙に熱心なのだろうか。
 各選挙制度を比較考量するうえで重要なのはこの点だが、有権者について冷徹な認識をしておく必要がある。選挙制度によって、有権者の選択の仕方が違うので、有権者が簡単に選択できるものから、複雑な選択をしなければならないものまで、それぞれ投票の決定で有権者にかかる負担は異なっている。それを、学問上は「情報コスト」の相違という。有権者がデタラメな投票をしてもかまわないのなら話は別だが、それでは困ると考えるなら、有権者がある程度きちんと選択できる選挙制度でなければならない(情報コストについては、小林良彰『公共選択』[東京大学出版会、1988年]参照)。