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- ソポクレース『アンティゴネー』、柳沼重剛訳
- 柳沼重剛「『アンティゴネー』解説」
- in : 松平千秋・久保正彰・岡道男編『ギリシア悲劇全集3:ソポクレースⅠ』、岩波書店、1990年
- http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/09/3/0916030.html
- 「解説」のみ読了。
- ソポクレース以前、および以外の『アンティゴネー』:
対象をアンティゴネーとクレオーンの対立という点に限らず、オイディプースを中心とするテーバイ伝説、昔からの言いかたに従えば「ラブダコス一族の伝説」ということにすれば、これはもちろん、どこまでさかのぼれるかわからないほど古い。有名なところでは、ホメーロス『オデュッセイア』第十一巻の、例のオデュッセウスの冥界訪問のくだりで、彼はオイディプースの母にして妻であってエピカステー(ソポクレースのイオカステー)の亡霊に会っていて、ここで今日われわれがオイディプース伝説として知っているものの骨組がすでに語られている。‥‥
‥‥[また]ホメーロス以外の叙事詩として『テーバイ物語』『オイディプース物語』というのがあったということが知られていて(今日ではともに失われてしまった)、アイスキュロスの『テーバイを攻める七人の将軍』の典拠はこれだと古くから言われている。ということはつまり、悲劇以前、叙事詩の世界で、すでにいくつかの(少なくとも二つの)オイディプース伝説が伝えられていたということであろう。
しかしこの『テーバイを攻める七人の将軍』でも、オイディプースの子供たちのうち兄弟二人の争いはテーマとされているが、アンティゴネー、イスメーネーの姉妹は顧みられていないわけで、そうすると、アンティゴネーとクレオーンの対立というモティーフは、ソポクレースの創案だったのかもしれない可能性があり、今日の学界の大勢もだいたいこれを支持している。(柳沼重剛「『アンティゴネー』解説」、pp.367-8)