• 小玉香津子『ナイチンゲール』、人と思想155、清水書院、1999年 [bk1]
  • 再読。良書。彼女の生涯、周辺について美化することなく最低限の知識を与えてくれる。
  • 病院の起源:

 キリスト教世界の中心が教会から修道会(院)へと移った中世には、修道会が要保護者の家の事業主となり、修道者たちの主な任務を病人の看護とすると会則に定める修道会も生まれ、そのような修道会のシスターが病院で看護を行った。“シスター”は、ディアコネス〔女の助祭〕に次ぐ看護婦の呼称である。
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 ところが、宗教改革を機に状況は一変した。プロテスタンティズムは、平たくいえば、修道生活だけが神に仕えるすべではなく、市井に暮らして職業生活に生きることもまた神に仕える道であると主張し、修道院を否定したのである。このため病院は事業主を失い、多くが閉鎖に追い込まれたり管理不全に陥ったりした。
 とくに英国においては、ヘンリー八世が修道院の解散を命じたので、貧しい病人は一時非常に悲惨な状態におかれた。例えば、「ロンドンの公道、公園、郊外において病気の貧民たち寝ころびて乞食する」という状態だった。[pp.47-8]