3.社会国家的権利宣言
 第一次世界大戦の前夜までの諸国の権利宣言の基調は、右にのべられたような意味において、だいたい十八世紀末のアメリカおよびフランスの権利宣言の流れを汲むものであったといえる。そこには、自由国家の理念の影響が、その程度には強いものと弱いものとのちがいがあったが、指摘された。
 ところが、第一次世界大戦を機として、諸国の権利宣言に、ひとつの新しい特色があらわれた。それは、多かれ少なかれ社会国家の理念の支配の下に、各種の社会権(doroits sociaux, Sozialrechte, Grundrechte)が、そこで宣言・保障されるようになったことである。
 この種の社会権の考えは、すでに古く、ジャコバン思想のうちにも、見られる。‥‥(宮沢俊義「人権宣言解説」)(p.22)