• 宇佐美久美子『アフリカ史の意味』、山川出版社、世界史リブレット14、1996年 [bk1]
  • 読了。おもしろかった&勉強になった。以下の例はもう少し詳しく知りたいところ。

 植民地期の歴史の歪曲と改竄
 ウガンダのブニョロ王国の歴史をイギリスが「たんなる神話」の地位におとしめたという例を先に紹介したが、このようにアフリカの過去が植民地支配のために書きかえられた例についてつぎに述べよう。
 コンゴ自由国[1885-1908]は、「自由」という名とは裏腹にベルギー国王レオポルド二世の私有財産として、『赤いゴム』で知られるゴム強制集荷制度などの激しい収奪がおこなわれたことで有名である。同地で植民地行政官が社会制度を大きくつくりかえた例を歴史家ヴァンシナが報告している。それによるとザイールのクバ人社会には長老会議が存在しなかったにもかかわらず、植民地統治期にカサイの県知事が、現地調査の結果を根拠に、同地域の伝統的な政治の意思決定機関は「長老会議」であると主張したという。そして、現地の制度の尊重を名目として、年に一度格地域の首長が植民地政庁に召喚されることになったそうだ。つまり県知事は植民地統治に都合がよいように調査結果に手を加えて、まがいものの「伝統的な制度」を利用したのである。この結果、初めはフィクションにすぎなかった「長老会議」が、現代のクバ人にとってはゆるしがたい「伝統的な」制度になってしまっているのだ。(pp.18-9)

  • 『赤いゴム』というのは以下:
  • E.D.Morel, Red Rubber – The story of the rubber slave trade that flourished in Congo in the year of grace 1906, 1906.