• 石母田正『中世的世界の形成』、岩波文庫岩波書店、1985年(原著初版1946年, 増補版1950年, 改版1957年。本書は改版を底本にしている。)
  • 読了。おもしろかった&勉強になった。この文庫版には、本文にくわえ、佐藤進一「《書評》石母田氏の『中世的世界の形成』」(1947)、石母田正「文庫版によせて」、石井進「解説」が掲載されている。いずれも参考になった。
  • 感想はといえば、第一章、第二章の中盤まではよくわからなかった、というのが正直なところである。「中世的世界の形成」とあるが、著者によればそれは「古代の自己批判」でもある(p.355)。古代、とりわけ荘園についての知識が乏しいものにとっては、かなり疲れる読書であった。
  • また、評判とは若干ちがう印象もうけた。たとえば、解説には「のちに本書は『叙述の文学性』や『一種の魔力』によって読者を魅了するなどと評された」とあり(p.460)、ほかでもそうした評判を耳にしたことがあるが、じっさい読んでみると、そうしたことばではとらえきれないものを感じた。改版のせいもあるのかもしれないが、通読してなによりも気になったのは、むしろその「論理」の強さ、叙述の巧みさ、そして著者の強い意志である。敢えて言えば、丸山眞男の戦中・戦後直後の著述(『日本政治思想史研究』や「超国家主義の論理と心理」等)からうけた印象に近いだろうか。奇しくも(?)、その丸山の仕事も「文学的」や「魔力的」と評されるので、同じことをちがうことばで言っているだけなのかもしれないが、いちおう書いておく。