• 虐待本二冊:

 上野加代子・野村知二[2003]『〈児童虐待〉の構築』、世界思想社

予防対策が促進する新しい監視、つまりリスクにもとづくシステマティクな予防という監視は、パノプティコン(一望監視システム)の要件であった視るものと視られるものと、看守と囚人、ケアするひととケアされるひととの間の直接的な関係性や接触を必要としない。監視は、接触なしに、視られる「主体」を欠いたままに実施される。主体との直接的な関係性がそこにないのは、そもそも主体が以前のような形では存在していないからである。新しい予防政策が第一に目標とするのは、個人ではなく、諸要因、それも異質な要素間の統計的な相関である。疑われるためには、危険性や異常の症状を呈する必要はなく、予防政策の任にある専門家たちがリスクファクターとして措定した諸特徴が警告を発するだけで十分なのである。(上野加代子)(p.201)

 鷲山拓男[2004]『子どもの虐待と母子・精神保健』、全国保健師活動研究会企画編集PHNブックレット1、萌文社

治療の目標は何か。目標は「子どもを虐待しないことができるようになること」である。「養育できる母親」「よい母親」になることが目標ではない。この点をはき違えると、全く見当はずれの援助になりかねない。(p.69)