• 三原博光[2000]『障害者ときょうだい』、学苑社
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  • あまり目新しい知見は得られないように思うし、調査もたいしたものではない。比較調査と書いてあるが、ドイツの調査と日本の調査を並べているだけという印象がつよく、それならばわざわざ比較などと言わなくともよいように思う。また、「エコロジー理論」なるものの説明も乏しく、わざわざ一章を割いた狙いを達成しているようにも思えない。そうした不十分な点はある程度著者も自覚しているようなのでいちいちあげつらう気はないし、そんなこと言い出したら世の大半の調査がそうなのかもしれないが、定価で買ってしまった自分への自戒を込めて書いておく。

‥‥きょうだいの結婚については、ドイツでは、きょうだいの17%が障害をもつ兄弟姉妹の存在が結婚の障壁になると考えていた。筆者は1999年にドイツを訪問し、重度障害をもつ親であるザイフェルト女史に、ドイツの障害者のきょうだいの結婚の状況について尋ねてみたが、彼女は、ドイツでは障害者の存在がきょうだいの結婚の障壁になることはほとんどないと語っていた(註。一方、わが国では、未婚者の41.3%のきょうだいが結婚の障壁になると回答しており、ドイツよりも高い数値がみられた。わが国のきょうだいたちは、この問題に関して、ドイツよりも強い社会的差別や偏見にさらされているのかもしれない。(p.165)