――知と権力の関係についてのあなたの分析は、人文科学の例から出発して行われています。この分析は、精密科学をその射程においてないのですか。
おいてません。全然。精密科学を分析しようなどと考えたこともありません。‥‥わたしが、なにをおいてもまず分析してみようという気になったのは「ヨーロッパにおいて、どんなぐあいに科学は権力として制度化されたのか」ということなんです。「科学とは、命題を反証したり、誤謬であることを証明したり、神話を暴いたりすることができる手続きの総体である」というだけでは不十分です。科学は権力を行使するということを忘れてはなりません。科学は文字どおりひとつの権力であって、あなたにある特定のいくつかのことだけを強制的にいわせようとします。そしてその指示にしたがわないと、あなたはまわりの人から、「思い違いをしている人」とみられるだけならまだしも、「ペテン師」というレッテルをはられかねないのです。科学は、大学組織を通じて、また、実験研究設備のシステム、まさしく強制的なシステムを通じて、権力として制度化されました。(pp.33-4