• 玄田有史・曲沼美恵『ニート:フリーターでもなく失業者でもなく』、幻冬舎、2004年ISBN:4344006380
  • 再読。なんというか――ネットで検索すると――いろんな言われ方をしててタイヘンな感じ。たとえばアマゾンのレビュー:

14歳へのインタビューに感動したなんて人がいますけど、それほどの内容には思えませんし、そもそも14歳の挑戦がどうしてニート対策になるのかわからない内容でした。一つ一つの章のつながりが弱いからだと思います。

  • なるほどたしかに「一つ一つの章のつながりが弱い」のはそうかと思うのですが、「14歳の挑戦」についていえば、本文中に以下のような記述(特に下線部)があるので、せめてこうした言明に触れた上で文句をつけてあげたほうが親切なのでは、というか;

 ニートは「働かない」のではない。「働けない」のだ。ニートは「働きたくない」のではなく、なぜか「働くために動き出すことができない」でいるだけだ。動き出すために、未知の誰かからの早い時点でのきっかけを必要としているのだ。
 理解しにくい若者の問題を、意欲の低下として片づけることができれば、大人の多くは安心なのだろう。理解できたとして安心して職業意識を啓発する作業に没頭できる。しかし第三者が人の意識や意欲を変えようというのは、多くの場合、傲慢以外の何ものでもない。本人すらわからない心の奥底の意識や意欲について、他人が決めつける権利は、どこにもないのだ。
 ニート予防のため14歳での経験に期待するのも、それが職業意識を啓発するからではない。職業意識なんていうことよりも、むしろ努力すれば自分でもなんとかなるという実感を自分のチカラで勝ち取ることのほうに、何倍も意味がある。(pp.244-5)

  • また、以下のような意見も。たしかにこの本で議論されているのは35歳未満の「若者」なのですが、それを言い出したら、「障害者」も議論に含めなければいけない、ともいえる――などと思ってみたりする今日このごろ。*1

結局、一番深刻なのは14歳の先がある人間ではない。もっと年齢を重ねて現にNEETとして不本意な人生を送っている彼らに他ならない。

彼らに向けて、どうすればいいのか少しでも参考になるような言葉がなにひとつ無かったのが残念でした。ただ「見とおしは暗い」というだけで突き放すだけではなんの情報価値もないのではないでしょうか?

*1:それで思い出したけれど、玄田有史さんが(本書で)推奨していることを抽象的にいえば「エンパワメント」ですよねぇ。だからなんだってわけではありませんが。