• 渡辺位『子どもはなぜ学校に行くのか:子育ては「個育ち」』、教育史料出版会、1996年
  • 懺悔*1

 いまでも登校拒否を病的状態としていろいろ分類する人はいるけれど、私自身も最初やっていたんです。学校に行かないか行けないという不登校状態が起こった場合、身体や精神の疾患によることがありますよね。重い病気になれば、学校に行こうにも行けないから現象的には不登校になる。また、そういう場合を除いても、子どもの個人的な事情から起こる不登校が、病気とは限らなくても起こりうるわけです。そういう不登校について、かつて私は「登校拒否」と称してやはり特別な状態だと考えて三つに分けたんです。
 一つは「表面の現われ方」から見て神経症的な状態の目立つもの。たとえば、強迫症状‥‥
 ‥‥もう一つは、閉じこもるとか、家庭内暴力‥‥それからもう一つは、不登校という状態がとくに目立っていて、それについてよく見ると、転居・転校とか、身体が本当に病気になってその後に引き継いでとか、ちょっとしたきっかけがあって不登校になるという群‥‥
 このように、登校拒否を特別な子どもにだけ起こることだと思っていた時代があったことはあったんです。〔文部省による定義では――引用者〕病気による場合を除いているんだから病気というのは変だけど、それはやはり基本的には、学校に行かないのは病的じゃないかとみて、ある意味では治療の対象だなんて思っていたことは事実なのです。そのための心理テストをやるとか、脳波検査までやるとか、考えてみたらずいぶん愚かなことをやってたなあと自分でも思うんだけど、そういうこともあった。それでかっこつきの「治療」ですか、それにつながるような原因探しもやった。(pp.64-6)

*1:と、某氏がいっていた。それはそうなのだろうと思う。