• 金益見『ラブホテル進化論』、文春新書620、文藝春秋社、2008年
  • 読了。おもしろかった&勉強になった。とくに著者の集めた業界の証言がたのしく読めた。井上章一氏は「この本からは、業界の肉声がひびく」と書いているが、まさにそんな感じ。社会学などで若い研究者がインタビューを手法に用いながら結局は自分の言いたいことを他人の口から言わせているだけにすぎないような研究を量産するなかで、本書は聴き取りの魅力を最大限に活かしているように思う。貴重な証言を集めかつ掲載した著者の才能に期待したい。
  • ただ、そのせいか、著者のいう「ラブホテルは日本の文化」や「日陰の存在ではない」という主張(p.17)はあまり説得的に思えなかった。いくつかの証言からうかびあがってくる経営者の試行錯誤は「文化」という大枠には収まりにくいように思えるし、それらはむしろラブホテルが良くも悪くも「日陰の存在」であるということ――少なくとも、そうであったということ――を示唆しているのではないだろうか。