• 近藤英俊・浮ヶ谷幸代編著『現代医療の民族誌』、明石書店、2004年
  • 読了。おもしろかった&勉強になった。
  • とりわけ、川添裕子「『普通』を望む人たち:日韓比較からみる日本の美容外科医療」には刺激をうけた。「普通」の強調が、日本における白人美のグローバル化の進展に歯止めをかけているのではという著者の主張はもっともだと思うが、そうであるなら、韓国では白人美のグローバル化はどのように進んでいるのだろうか、と考えさせられた。
  • たとえば、ややこの論文の主旨とはずれるが、日本では美人とされるひとたちも(取材されているクライアントのひとたちと異なる仕方であれ)「普通」を望んでいるように見える。少なくとも、そこから逸脱しないように慎重に配慮しているように見える。そうした傾向も著者のいう白人美のグローバル化の抑制とつながるのだろうが、では、はたして韓国においては(美人とされるひとたちの)事情はどうなのだろうか。そんなことを考えさせられた。
  • それから、この論考では、ジェンダーアイデンティティとは半ば独立的に、「普通」が求められている様が描かれている。そういうありきたりのジェンダー論にしないところがこの論文のおもしろさでもあると思うのだが、しかしながら、同時に、やはり(?)、ジェンダーについてはもう少し踏み込んで考えてみたいと思わされた。たとえば、今年話題になった秋葉原殺傷事件をめぐっての言説でも(たとえば、『アキハバラ発:00年代への問い』(岩波書店, 2008年)『アキバ通り魔事件をどう読むか!?』(洋泉社, 2008年)その他等)、容疑者が自身の容姿を問題視していたことが取りざたされる一方で、容姿をめぐるジェンダー性についてはほとんど掘り下げられていなかったように思う。ありきたりのジェンダー論に陥らずに、しかし容姿について、ジェンダーの視点を入れつつ考える余地はないだろうか。そう考えさせられた。