浦河べてるの家[2002]『べてるの家の「非」援助論』、医学書

‥‥べてるでは「偏見をなくそう」ではなくて、次のように町の人たちに言いつづけてきた。
 「偏見? ああ、あたりまえです。差別? みんなそうなんですよ。誤解? 誤解もよくあることです。病気をした私たちでさえ、この病気になったらもうおしまいだなどという誤解をして、慣れるまでけっこう時間がかかりました。ですから、みなさん大丈夫です。あまり無理して誤解や偏見をもたないように努力したり、自分を責めたりもしなうほうがいいんです。体をこわしますから」(p.53)

 精神保健を担う関係機関や医療機関は、地域住民を「精神保健に理解の薄い人たち」ととらえている。地域には差別や偏見が渦巻いていると考え、啓発活動に予算と時間を割いてきた。
 しかしこれまでの二十数年を振り返ってみても、浦河ではその種の直接的な啓発活動は見事なまでに開かれていない。‥‥「地域には偏見や差別が渦巻いている」と決めつけ、啓発活動をおこなってきた精神保健の専門家自身が、じつは地域を知らず、理解していないのではないか。(pp.53-4)